こんにちは、年間100冊の本を読む40代キャリアカウンセラーのほんまるです。
あなたは今、誰かと話しているはずなのに、ふと「孤独」を感じることはありませんか?
職場の同僚、パートナー、あるいは親子関係において。
「どうして私の気持ちを分かってくれないんだろう」
「相手のために良かれと思って言ったのに、なぜか怒らせてしまった」
「人の話を聴いていると、なんだかひどく疲れてしまう」
もし、そんなモヤモヤを抱えているとしたら、それはあなたの「コミュニケーション能力」が低いからではありません。
ただ、「共感」というものの正体を、少しだけ誤解しているだけなのかもしれません。
実は私自身、キャリアカウンセラーという仕事をしていながら、人の話を聴くことに限界を感じ、自分自身の心がパンクしてしまった経験があります。
相手の感情に巻き込まれ、どう言葉をかけていいか分からず、無力感に苛まれていたのです。
そんな時、私を救ってくれたのが今回ご紹介する一冊、『プロカウンセラーの共感の技術』でした。
この本は、単なる「聞き上手になるテクニック本」ではありません。
人と人が心を通わせるとはどういうことか、その深淵に優しく、そして実践的に触れた名著です。
この本を読み(聴き)終えたとき、あなたの目の前にいる「苦手なあの人」や「大切なあの人」への眼差しが、きっと温かいものに変わっているはずです。

| タイトル | プロカウンセラーの共感の技術 |
| 著者 | 杉原保史 |
| 出版社 | 創元社 |
| 発売日 | 2015/1/20 |
忙しい人のための3分サマリー(結論)
忙しいあなたのために、まずは本書の結論をお伝えします。
① 共感とは「同じ気持ちになること」ではなく、「分かろうとして関わり続けるプロセス」である。
② 「考えるな、感じろ」。自分の判断を脇に置き、相手の感情をそのまま鏡のように映し出す技術(反射)が心を癒やす。
③ 自分自身のネガティブな感情も「受容」できて初めて、他者への深い共感が可能になる。
こんな人に読んでほしい一冊です
- 家族や部下など、身近な人との関係がギクシャクしている人
- 「話を聴く」のが苦手で、ついアドバイスや説教をしてしまう人
- 相手の感情に引きずられて、自分まで辛くなってしまう人
- 表面的な会話ではなく、もっと深い信頼関係を築きたいと願う人
プロが教える「共感」の正体とは?
「共感」と聞くと、多くの人は「相手と全く同じ気持ちになること」だと思いがちです。
しかし、著者の杉原保史先生は、その定義をきっぱりと否定します。
私たちは一人ひとり違う人間です。全く同じ経験をすることも、同じ痛みを感じることも、原理的には不可能です。
「あなたの気持ち、全部わかるよ」なんて言葉は、時に相手を傷つけることさえあります。
では、プロのカウンセラーが考える「共感」とは何でしょうか。
共感は、個人の境界線を越えてあなたと私の間に響き合う心の現象、つまり、「人と人とが関わり合い、互いに影響し合うプロセス」のことなのです。
(中略)
「共感できないという感じをありのままに感じることかできれば、それはすでに共感の始まりです」(出典:『プロカウンセラーの共感の技術』)
つまり、「分からない」という感覚を出発点にして、それでも相手を分かろうとし続ける態度そのものが共感なのです。
この前提に立つだけで、ふっと肩の荷が下りませんか?
無理に同じ気持ちにならなくてもいい。ただ、そこに心を向け続けること。それがスタートラインです。
1. 「考えるな、感じろ」思考を止めて感覚を開く
共感の第一歩は、頭で考えることをやめることです。
あの有名なブルース・リーの言葉、「Don’t think, Feel(考えるな、感じろ)」こそが、共感の極意だと著者は言います。
誰かの相談に乗っているとき、あなたの頭の中ではこんな声が響いていませんか?
- 「どうやって解決してあげようか」
- 「どこが間違っているのか指摘してあげよう」
- 「次に自分が何を言おうか」
これらはすべて「思考」です。
思考が働いている間、私たちは目の前の相手を「感じて」いません。
ランチの味を考え事のせいで覚えていないのと同じように、思考は相手の存在を味わうことを邪魔してしまいます。
まずはリラックスして、相手の声のトーン、表情、そして自分の中に湧き上がってくる感覚にただ注意を向けること。
判断や評価を脇に置いて、「ああ、この人は今、こう感じているんだな」と味わうこと。
これがプロの聴き方の基本姿勢です。
2. 魔法の技術「反射」:質問ではなく断定で返す
本書の中で最も実践的で、効果が高いと感じた技術が「反射」です。
例えば、相手が「寂しいんです」と言ったとき。
多くの人は「寂しいんですか?(質問)」と返してしまいます。
しかし、プロは「寂しいんですね(反射)」と返します。
たった一文字の違いですが、ここには天と地ほどの差があります。
- 「寂しいんですか?」:相手に分析を求める問いかけ。相手は「自分は寂しいのか?」と考え始め、感情から離れてしまう。
- 「寂しいんですね」:相手の感情をそのまま受け止めた証。鏡のように映し出すことで、相手は自分の感情を深く味わい、安心する。
「間違っていたらどうしよう」と怖がる必要はありません。
これは「当てっこ」ではなく、「私はあなたをそう感じました」という自分からのメッセージ(冒険)だからです。
もし外れていても、相手は「いや、寂しいというよりは、悔しいんです」と訂正してくれます。
それによって、さらに深い理解へと進むことができるのです。
3. 言葉にできない「声なき声」を聴く
人は、言葉だけでコミュニケーションをしているわけではありません。
むしろ、本当に大切なことほど言葉にはできず、声のトーンや沈黙の中に隠れています。
本書では、「矛盾や葛藤」に寄り添うことの重要性が説かれています。
例えば、「夫と別れたい!」と激昂している人が、ふと「でも、あの人も苦労してきた人だし…」としんみり語り出す。
そんな時、私たちはつい白黒つけたくなります。「結局、別れたいの?別れたくないの?」と。
しかし、著者はこう言います。
「人は常に矛盾や葛藤を抱えて生きています」
「健康な人は矛盾や葛藤は当たり前のこととして、ごく自然に抱えています」(出典:『プロカウンセラーの共感の技術』)
矛盾を指摘して論破するのではなく、「別れたいほど辛い気持ちと、夫を労る気持ち、その両方があるんですね」と、両方の気持ちをそのままテーブルの上に並べてあげる。
その際、「しかし(逆接)」ではなく「そして(順接)」でつなぐのがコツです。
矛盾した感情をどちらも「あっていいもの」として受容された時、人は初めて自分の足で解決へと向かい始めます。
4. 共感には「自分の心の傷」が必要になる
「テクニックは分かったけれど、どうしても共感できない相手がいる」
そんな悩みにも、本書は深い視点を与えてくれます。
実は、他者に共感できない時、私たちは「自分自身の心の一部」を拒絶していることが多いのです。
自分の中にある「弱音を吐きたい自分」や「ズルい自分」を許せていないと、他人の弱音やズルさが許せなくなります。
著者の杉原先生ご自身も、大病を患った経験や、自分の中にある「認めたくない欲求」と向き合うことで、共感の幅が広がったと語っています。
自分自身への共感(セルフ・コンパッション)なくして、他者への深い共感はありません。
ネガティブな感情、嫉妬、怒り。それらを感じる自分を「人間らしくていいじゃないか」と許すこと。
それが、巡り巡って他者への優しさへとつながっていくのです。
【体験談】「アドバイス魔」だった私が、ただ「聴く」に変えたら起きた奇跡
ここからは、私が実際にこの本の教えを実践して、驚くような変化を体験したお話をさせてください。
私は以前、職場である後輩との関係に悩んでいました。
彼は真面目なのですが、いつも自信がなさそうで、仕事のミスも多いタイプ。
私は良かれと思って、彼が相談に来るたびに「もっとこうすべきだよ」「それは考えすぎだよ」と、即座に解決策(アドバイス)を提示していました。
でも、言えば言うほど、彼の表情は暗くなり、次第に私を避けるようになっていきました。
「せっかく教えてあげてるのに、なんで?」
私は正直、イライラしていました。
そんな時、この本に出会い、ハッとしたのです。
「私は、彼の不安を『処理』しようとしていただけだ。一度も『感じよう』としていなかった」と。
ある日、彼がまた「自分にはこの仕事、向いてないかもしれません」とこぼしました。
以前の私なら、「そんなことないよ!向いてるよ!」と励ますか、「どこが向いてないと思うの?」と分析を始めていたでしょう。
でも、私はグッと堪えて、本書の教え通りにやってみました。
思考を止め、彼の沈んだ声のトーン、伏し目がちな視線をただ感じました。
そして、勇気を出して「反射」をしてみたのです。
「…そうか。自分には向いてないんじゃないかって、自信をなくして、辛い気持ちになってるんだね」
私の意見は一切挟まず、ただ彼の言葉と感情を鏡のように返しました。
すると、驚くべきことが起きました。
いつもなら「でも…」と言い訳をする彼が、深く息を吐き出し、ポロポロと涙を流し始めたのです。
「そうなんです。怖くて、怖くて…」
そこから彼は、今まで誰にも言えなかったプレッシャーや、過去の失敗体験を話してくれました。
私はただ「怖かったんだね」「悔しかったんだね」と頷き続けました。
一通り話し終えた後、彼は憑き物が落ちたような顔でこう言いました。
「聞いてくださって、ありがとうございます。なんだかスッキリしました。…もう少しだけ、頑張ってみます」
私が何か素晴らしいアドバイスをしたわけではありません。
ただ「聴いただけ」です。それなのに、彼は自ら立ち上がり、前を向いたのです。
「人は、十分に共感されれば、自ら変化していく力を持っている」
本に書かれていたことは、本当でした。
この体験は、私がキャリアカウンセラーとして、そして一人の人間として生きていく上での、大きな財産になっています。
明日からできる!共感を深める3つのアクション
この本には、専門的な知識がなくても、明日からすぐに使える具体的な技術がたくさん詰まっています。
その中から、特に効果的で簡単なものを3つ厳選しました。
1. 「自分の意見」を一旦脇に置く練習
誰かの話を聞いている時、「それは違う」「こうした方がいい」という自分の意見が湧いてきたら、それを心のゴミ箱に捨てるのではなく、「おっと、自分の意見が出てきたな」と気づいて、そっと横に置いておく(棚上げする)イメージを持ちましょう。
そして、「相手の目で見たら、世界はどう見えているんだろう?」と意識を切り替えてみてください。
2. 語尾を「反射」に変える
会話の中で、「〜なんですか?(質問)」と言いたくなったら、グッと堪えて「〜なんですね(受容)」と言い換えてみましょう。
「疲れました」→「疲れたんですね」
「腹が立ったんです」→「腹が立ったんですね」
これだけで、相手の安心感は劇的に高まります。
3. 声のトーンと呼吸を合わせる
言葉の内容よりも、相手の「声」を音楽のように聴いてみてください。
相手がゆっくり話していたら、自分もゆっくりと。
相手の呼吸が浅くなっていたら、自分は深く息を吐いてリラックスする。
相手の呼吸に合わせる(ペーシング)だけで、不思議と一体感が生まれ、深い共感の場が整います。
まとめ:共感とは、相手を信じて「賭ける」勇気
『プロカウンセラーの共感の技術』は、単なるコミュニケーションスキルの本を超えて、私たちの生き方を問い直してくれる一冊です。
著者は言います。
「共感とは、何よりもまず、対人関係で逃げ腰にならないことです」と。
相手のネガティブな感情に触れるのは怖いことです。
拒絶されるかもしれないし、巻き込まれるかもしれない。
それでも、「あなたと関わりたい」「あなたを理解したい」と、相手を信じて一歩踏み出す勇気。それが共感の本質です。
私たちは誰もが一人ぼっちで生まれ、一人ぼっちで死んでいきます。
だからこそ、生きている間に誰かと心が深く響き合う瞬間は、人生における奇跡のような宝物です。
もしあなたが、人間関係に疲れ、孤独を感じているのなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。
まずは自分自身に「辛かったね」「頑張ってきたね」と共感してあげてください。
自分への共感が満ちた時、あなたはきっと、大切な誰かの心に優しく寄り添えるようになっているはずです。
あなたの優しさが、世界を少しだけ温かくすることを信じて。
関連書籍
- 『プロカウンセラーの聞く技術』(東山紘久 著)
…本書の著者である杉原氏の師匠にあたる方の名著。よりシンプルで本質的な「聞く」姿勢が学べます。 - 『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健 著)
…「課題の分離」という概念は、共感をしすぎて自分を見失わないための重要な視点を与えてくれます。


